チャウピュ港の環境社会影響評価プロセスに関して生ずる法的な問題

  • 2019年 9月 25日

中央ラカインの中国支援港プロジェクトの環境社会影響評価プロセスが開始されたが、開発者が適切な法的枠組を用いているかどうか疑わしい。
13億米ドルが提案されたチャウピュ港を担当する国営企業CITICは2019年7月、環境社会影響評価(ESIA)及び予備的な地質調査を開始した。
CITICによると、プロジェクトマネージャーとして採用されたカナダの企業Hatchが当該プロセスを監督し、ESIAプロジェクトのコンサルタント及び請負業者を募っている。
7月2日、CITICはヤンゴンのチャウピュ経済特区(SEZ)管理委員会事務所で最初の出資者会議を開催し、マダエ島を視察した。
同社は、ESIAプロセスの一環として、「広範囲かつ適切な協議を行うために、プロジェクトの全出資者の参加手順を整える」と述べた。その準備作業は、「厳密かつ公衆に開かれた透明な方法で」実行される。
チャウピュに港及び工業団地を建設するという提言は、2015年にテイン・セイン政権によって議論され、CITIC率いるコンソーシアムが中央ラカインに75億米ドルのSEZを設立する計画を策定することが同政権により承認された。企業のプロモーションビデオは、このスキームが香港やシンガポールに似た投資と物流のハブを作り出すことを示唆している。
政府は2018年11月にCITICとの「フレームワーク契約」を締結した。ミャンマーは出資金の30%を所有し、プロジェクトの費用は13億米ドルになる。ヤンゴンに本拠を置く情報筋によると、欧州と日本の投資家が港や工業団地に工場等を構える見込みはないという。
しかしながら、開発者が現在採用している法的枠組みに関して混乱が生じている。ミャンマーの環境法は、当該規模と範囲のプロジェクトに対しては敷地全体の環境影響評価を要求しているが、これには、環境的及び社会的な影響の両方の評価が含まれなければならない。
CITICの最新の報道発表では、現在のESIAプロセスがSEZではなく、とりわけ港のためのものであることを示唆している。
ICJ法律顧問のSean Bain氏によると、SEZの場合は、それを敷地に関する評価に組み込む必要がある。SEZ計画が破棄され、港湾プロジェクトのみにとどまる場合、SEZ法の代わりに投資法が適用されるため、CITICが誤った法的枠組の下で運用されるおそれがある。
「私たちの組織やチャウピュのその他の人々によって証明された人権問題に対処する方法で、開発者と当局がプロジェクトを合法的に実施するという公約を果たすことを期待している」
「今までのところ、取り組みに変化の兆候は見られない。長期間延期されたプロジェクト計画が真の透明性を得ることが良い出発点となるだろう」と彼はミャンマータイムズに語った。
現在の取り組みには別の潜在的な問題があると評論家は言う。Kofi Annan氏が議長を務めるラカイン諮問委員会は、その地域の他の産業へのリスクと利益を概説するために、地域社会への影響を調査し、ESIAプロセスに先立つ戦略的環境評価(SEA)の実施をミャンマー政府に対し推奨した。
国家顧問のAung San Suu Kyi氏は、委員会からの全ての勧告を実施することを公約していた。
WWF 2017の報告書は、環境リスクをより適切に評価しそれを最小化するために、ミャンマー政府にBelt and Road Initiatives (BRI)(BRI)のSEAを実施することも推奨している。
報告書はまた、BRIの道路プロジェクトは、自然災害リスクを軽減するために重要とされるミャンマーの自然資本資産に損害を与える可能性があると述べた。
たとえば、ラカイン州は、ミャンマー国内において自然災害や気候変動の将来的な影響によって最も脅かされている地域である。SEAは、全ての人々に対して健康的な環境を保全するための戦略的な適応と緩和策を特定するのに役立つだろう。
「チャウピュが最初に想定される巨大プロジェクトである場合、政府は、2年以上前に自身の諮問委員会が推奨したように、地域全体とその周辺の戦略的環境評価を委託するのが賢明だろう」とBain氏は付け加えた。
ESIAプロセスは、政府がSEAを実施しないことを示唆している。政府の広報担当者にコメントを求めたが、電話には応じなかった。
ラカイン州では、約1か月間インターネットが切断されている。運輸通信省は6月21日、全ての通信事業者に対し、地域の安定と法の支配を確保するために、軍と武装グループの間で戦闘が行われているラカイン及びチン州の9つの街でインターネット接続を一時的に切断するよう指示した。
(Myanmar Times 2019年7月19日版 第6面より)