新しい競争委員会は既に批判を浴びている

  • 2019年 8月 15日

ミャンマーの競争改革についての公約は、政府が大臣に仕える官僚たちで新しい競争委員会を組織したことで批判を浴びた。
11名の委員のうち委員長を含む6名が政府高官である一方、経済学者として認定されているのは1名のみである。
商業省大臣のThan Myint氏を委員長へ任命したことについて、ヤンゴンに本拠を置く政策シンクタンクを率いるAung Khant氏は「疑問の余地がある」と述べた。
「商業省は多くの分野において保護主義のままであり、地元のビジネスエリートが選んだグループを支持することが多い」との見解を示し、閣僚がこれを否定した。
各国政府は、通常、既得権や政治的圧力とは無関係に、各分野の意思決定を技術者に委任しているが、今回の委員長の任命はこの国際的な最良の慣行から逸脱している。例えば、インド、香港、シンガポール、イギリスの競争当局はいずれも政治家が率いてはいない。
しかし、批判は任命だけに留まらない。IT企業のオーナーであり、2015年の選挙でアウンサンスー・チー氏を支持したというミャンマーの実業家Zaw Naing氏によると、委員会がどれほど深刻な状況にあるか国内事業者たちは気づいていない。
汚職禁止委員会は、政府高官に対しても公的立場で措置を講じているので公約を明示できるが、対照的に競争委員会は何をしようとしているのか、そして「どこへ向かうのか」、国内の企業はわかっていないと彼は言う。
公平性を保持する目的において、委員会は「謂わば幼少期にあり、委員たちはまだ学習段階にいる」と続けた。
「競争委員会が厳粛な機関であることを企業に納得させるためには、当該委員会は政府の政策や活動を含む注目されている問題に取り組む必要がある」
評論家や投資家によると、消費者を悩ませている問題のうち、委員会が対処できることは沢山ある。例えば、貨物輸送によるヤンゴン-マンダレー高速道路の使用やスピリッツの輸入に対する制限等の問題がこれに当たる。後者は、偽造品、違法取引及び税収の損失をもたらした。
しかし、これらの制限を遵守している省庁に関与する委員たちも、この問題に意欲的に取り組むべきかについて疑問を投げかけている、とMyanmar Centre for Responsible Business社 取締役のVicky Bowman氏は述べた。
ミャンマータイムズの取材に対し委員会は、大臣のThan Myint氏は「公正な競争を理解している」ので自分の省庁に関係する議論から自身を遠ざけることはないと述べた。

疑問視される能力
新しい機関は、意思決定の際に資格を有する経済学者の参加若しくは助言が必要であると専門家は指摘する。
高質の競争機関は、いかに競争と生産性を促進させるかという「消費者優先」の明確なビジョンを持つとともに、国際基準の弁護士や経済学者による支援体制がある人物が率いるべきであるとMekong Economics社の首席エコノミストのAdam McCarty氏は述べている。
「「国際基準」とは、海外の大学院の学位に加え、貿易摩擦の実務経験や反競争的慣行の研究実績があることを意味する」と彼は続けた。
一方、多くの閣僚や役人は「才能と意欲に溢れている」が、矛盾する役割を切り離し職責に基づき委員会を擁護することの難しさに委員たちは気づくであろうとZaw Naing氏は考える。
「この取り決め(委員会の構成)は機能しないと感じている。今後2年間で委員会は何をするのか。ごく僅かであることを懸念している」と述べる。
これに対し、機関にはベテランの民間弁護士であるThan Maung副委員長を含む5人の外部任命者がいることと、彼らの合意によって決定が下されることを委員のThuta Aung氏は強調した。
「政府の上級役人の関与は、様々な政府機関へ意見を求める際に有効に機能する。しかし、特定の省庁の訴訟に関心がある場合、各委員は自分の立場に投票し、それを公にするであろう」
「また、私たちの委員会は特別調査局の副局長を一員としているので、優れた調査能力を有するとしてフィリピンの同等組織でさえうらやんでいた。」
必要に応じ、「専門家」を含む調査委員会を設置し、費用対効果の高い方法としてこれを擁護すると彼は付け加えた。Dentons Rodyk社の常駐代表弁護士であるQuek Ling Yi氏によると、このような委員会は未だ設置されていないという。
Thuta Aung氏は機関に自身の複合的経験を取り入れ、また自身を「反権力転じて権力者になった」と称しながら自らの経済学者の経歴を一層強調した。「世界中の全ての委員会が機関内に経済学者を擁しているわけではない」

競争体制
競争委員会は、国民民主連盟が主導する政権によって2018年10月に設立され、2015年に議会が競争法を可決してから3年以上が経過した今月、正式に業務を開始した。
「法律の目的は、企業の公平な競争環境と産業内の公正な競争を創出することであり、その結果として企業の革新と成長が促進されること、そして委員会はこれを支援することが期待されている」とThan Myint氏は述べた。
この遅れは、細則を準備する必要性が一因であるが、競争政策が現政権の改革課題のうち優先度が高くないことも示している。しかし2018年5月世界銀行ミャンマー経済モニターと2018年在ミャンマーヨーロッパ商工会議所企業信用調査は、経済に関して保護主義出現の認識に向かっていると指摘しているとして投資家たちは懸念を表した。副議長のThan Maung氏は、法律も委員会も事業を制限したり追加の規制を課すことはないと述べた。「不当競争を防ぎ、市場の独占から中小企業を守ることを目的としている」
政策や当局に密な関係にある企業を巻き込む事件に対し、果たして委員が公平かつ効果的に取り組むことができるのかと、Zaw Naing氏は疑問を呈する。
「これを怠ると、ミャンマーの経済改革は打撃を受けるであろう。多くの分野での成長は公正な競争にかかっている」
彼は、ヤンゴンの小売用燃料市場の潜在的な事例を挙げた。Phyo Min Thein首相の下、市政府はヤンゴンでの新しいガソリンスタンドの開設を阻止し、代わりに民間企業のYangon Petrol 社の小売用燃料価格引き下げに介入したと伝えられている。
政府は、低価格で顧客に燃料を販売することを理解した上で、一等地の土地を非常に低い価格でYangon Petrol社にリースしている。Yangon Petrol社の燃料価格は、平均して他のガソリンスタンドよりも1リットル当たり50~60チャット前後安い。
「委員会は、独立した立場でこの案件に介入し、調査することができるのか疑わしい」とZaw Naing氏はThan Myint氏とPhyo Min Thein氏の両社が同じ政党の政治家であることに注目し言う。

次は何か
ロンドンのクイーンメアリー大学の国際政治学の第一人者Lee Jones博士は、委員会又は法律が広範なミャンマーの経済改革へ及ぼす影響について懐疑的である。
ある推定によると、同国経済の半分のうちの大部分が、軍が所有する会社や縁故資本主義の複合企業、少数民族の武装グループの関連企業によって占められていると彼は述べた。更に、これらの企業の利益は様々な形態の反競争的取り決めに依存していることが多い。
「この取り決めを乱せば、これらの強力な勢力から大きな抵抗が起こり、政治的にも非常に不安定になる可能性もある。それゆえ、委員会は非常に慎重に進め、最も確かな方法をとるだろう」
合併規制があるのかどうか、そして市場支配の法的な限界が何かを投資家は知りたがっているとQuek氏は付け加えた。その他の差し迫った問題には、協業が制限されるような市場シェアの限界、及び法律の下でどのような事業活動が対象となるかが含まれる。
(Myanmar Times 2019年6月16日版 第6面より)