ミャンマーは11月8日に総選挙が行われる。これは国内外の企業幹部、投資家、管理者及び専門家が知っておくべきことである。
どのようにミャンマーの総選挙は機能し、投票後何か起きるのか?
ミャンマーは現在の議会が選出された前回の総選挙から5年後に、ネピドーで2つの議会で構成される連邦議会の代表の投票を行う。新たな議員は来年の2月に議席を獲得し、2021年4月に就任し政権を形成する大統領の投票を行う。3つの重要な大臣職と、両院ともに議席の25%は憲法により軍のために留保されている。
有権者は440議席ある下院議会と、224議席ある上院議会の地区代表の候補者1名に投票することができる。
候補者は通常政党から選ばれるが、無所属でも出ることができる。選挙区で最も多くの票を獲得した者は、単純小選挙区制に基づき選出される。
軍設計の憲法の下、選出された議員は下院で330議席、上院で168議席を占めることになる。議員の4分の1を占める残りは、軍の最高司令官により任命される。
国家顧問を含む大統領の大臣任命は、両院の承認を必要とするが、国会議員又は与党の議員である必要はない。
実際に、大臣となる国会議員は自身の選挙区から退き、補欠選挙の引き金となる。大臣の法的承認プロセスは非常に形式的で、米国の確認プロセスとは異なる。議会が候補者を拒否することができる唯一の理由は、最低年齢又は市民権等の憲法で定められた職位の基準を満たしていない場合である。
大統領は、憲法に基づき軍と権力を共有している。2人の副大統領のうちの1人、内務大臣、国境大臣及び防衛大臣は最高司令官により任命される。投票は、民族武装組織により管理されている一部の国境地域では実施されないだろう。
誰が選挙の責任者?
選挙は連邦選挙委員会により管理及び規制されている。全員男性の権威は2016年にそのリーダーシップを変更し、現在は大学の元学長Hla Thein氏が議長を務める。
誰が立候補しどんな政権があるのか?
Win Myint大統領及びアウンサンスーチー国家顧問は、両方とも続投の意向を発表した。ヤンゴンのPhyo Min Thein首相を除く全ての現在の州及び管区首相は、昨年医療休暇を取っていたマンダレーの首相であり与党副議長を務めるZaw Myint Maung氏も含み、再び立候補するため再選されている。国民民主連盟(NLD)は、2015年の選挙ではイスラム教徒を除外していたが、今回は2人のイスラム教徒の候補者を発表した。
議会で第2の最大政党である、軍が支援する連邦団結発展党(USDP)もまたThan Htay氏が率いて選挙の準備を進めている。ラカイン州のアラカン民族党(ANP)、シャン州のシャン諸民族民主連盟(SNLD)等の、それぞれ第3、第4の最大政党である様々な民族党も準備を進めている。
選挙結果に異議を唱えるため、新たな政党及び団体が過去5年間で結成された。元独裁者Than Shwe氏の弟子であるがUSDPから追放されたThura Shwe Man氏は、2019年に自身で連邦改善党(Union Betterment Party)を設立した。元NLD国会議員で実業家として有名なThet Thet Khine氏は人民さきがけ党(People’s Pioneer Party)を開始し、国民党(People’s Party)は88年学生運動リーダーであるKo Ko Gyi氏により設立された。全員、選挙への出馬が予想される。
政党は現在どのように成り立っているのか?
上院議会(224議席)は、NLDが135議席、軍が56議席、USDPが11議席、ANPが10議席、SNLDが3議席で、残りを5つの他の政党及び無所属が占めている。下院議会(440議席)は、NLDが255議席、軍が110議席、USDPが30議席、ANPが12議席、SNLDが12議席で、残りを7つの他の政党及び1名の無所属が占めている。
投票は誰が認められる?
国内には3,700万人以上、海外には400万人以上の有権者がいる。カマン人ではない、ラカイン北部で迫害された過半数のイスラム教徒の民族組織は、歴史的選挙前の2015年に、Thein Sein元大統領により公民権を剥奪された。Human Rights WatchやAmnesty Internationalといった人権団体は、現政権に繰り返しこの問題を提起してきたが、現在までThein Sein政権の政策は変更されていない。
重要な日は?
公式な選挙日は、連邦選挙委員会(UEC)により11月8日に設定されている。議会は60日間の選挙活動のために8月下旬又は9月上旬に解散することが許可される。
海外に住む国民は8月5日までに、大使館で事前投票の登録を行うことができる。障がい者、国内避難民及び被拘禁者もまた事前投票の対象となる。
新たな議会は来年の2月に招集され、3月に大統領投票を行い、4月1日に大統領は内閣に就任する予定である。現政権は3月31日に解散する。
地方自治体選挙とは何か?重要?
州及び管区議会のための選挙もまた同日に実施される。これら地方議員数は人口規模に応じて、州及び管区ごとに24名から123名いる。連邦レベルと同様に、各議会の議席の4分の1が軍により留保されている。
地方自治体を代表する首相は、承認を管区又は州の議員に求める必要はなく大統領により任命される。地方自治体及び議会は、異なる党により率いられる可能性がある。2015年の選挙後、アラカン民族党が半数以上の議席を獲得したにもかかわらず、NLDは自党からラカイン州の首相を任命した。
連邦議会の大臣とは異なり、首相は選出又は軍から任命された州又は管区議会のメンバーである必要があり、その役職を引受ける際に議会を辞任する必要はない。
企業は政党及び候補者の支援に関与することができるか?
ミャンマーの選挙規制は、政治家への企業の寄付にほとんど制限を課していない。外国組織及び企業からの寄付は禁止されている。
現地企業及びその所有者は、候補者及び関連政党に寄付することができる。選挙法は個々の候補者の支出に制限を課しているが、政党に対してはない。政党は選挙に関連する場合でも、活動のための選挙資金を報告する必要はない。
ヤンゴン企業コミュニティは国連のFact Finding Mission2019年報告書をきっかけに、日本の醸造会社キリンが、2017年後期にラカインのイスラム教に対する取り締まり中に子会社であるMyanmar Breweryを通して軍に寄付を行ったことがAmnesty Internationalにより確認されて以来、寄付を行うことによるレピュテーションリスクに対してより警戒を強めている。
規制の不足を考えると、企業は所有者及び取締役会に詳細を発表して承認を得ることで寄付の決定を行うべきであると、ミャンマー企業責任センター、人権団体は助言する。これは、自社の飛行機で無料で政治家を乗せたり、施設を提供したり、政党及び選挙活動を支援するために従業員を貸したりするといった現物での寄付にも及ぶべきであると示唆している。
企業はマニュフェストで何を見たいのか?
政党はまだマニュフェストを発表しておらず、法的にもする必要はない。2015年にNLDは「変化」のプラットフォームで選挙活動を実施したが、経済にとって何を意味するのかを明確にすることはほとんどなかった。外国及び国内企業コミュニティは、政党の経済政策をより明確にすることを望んでいる。
ヤンゴン及びマンダレーの企業幹部によると、選挙で選ばれたらどのように特定の業界の運営を意図しているのかという政党の政策の詳細は、計画を進める上で管理者及び投資家にとって重要である。
民間セクターは、政党が更なる投資政策の自由化、政府の官僚的形式主義の徹底的な見直しを支持するかどうか、そして特にエネルギー及びインフラセクターにおいて中国への移行の認識が続くかどうかの兆候を探している。
西洋及び日本からの投資家もまた、政党がラカイン州での軍の軍事行動に対して米国及び欧州により課せられる更なる制裁の可能性に、どのように対処する予定であるかを注視している。
軍は2つの保有する企業を通して、経済の大部分で活動している。これが近い将来変わる可能性は低いが、一部の西洋政府は、企業及び金融機関が軍所有の企業との関係を断ち切るよう動いた。
COVID-19により選挙は延期されるか?
ミャンマーの政治専門家によると、延期はCOVID-19の第2波が高い感染症例数を引き起こさない限りない。
(Myanmar Times 2020年7月29日付オンライン記事より)