2019年 ミャンマー透明性報告書:知っておくべき5つのこと

  • 2019年 7月 02日

第5次ミャンマー透明性報告書が、The Myanmar Centre for Responsible Business(MCRB)と、ヤンゴンに拠点を置くコンサルティング会社のYeverによって発表された。
首位はシティマートで、次いで、ファーストミャンマー投資(FMI)、マックスミャンマー、シュエタン、ユナイテッドアマラ銀行(UAB)が名を連ねた。情報公開及びコーポレートガバナンスにおいて、ミャンマーの国営企業が民間企業に遅れをとっていることをこの報告書は明かしている。
今年の報告書から何を知るべきか。以下に、5つの要点を示す。

1.情報開示は全体的に向上
コーポレートガバナンス情報の開示と業績報告という課題にうまく対処している優良企業もある。
シティマート、FMI、マックスミャンマー、シュエタンは、特にコーポレートガバナンスと非財務情報の開示強化に全力を注いできた。
優良企業も企業プロファイル形成は強いが、コーポレートガバナンスと報告はまだ弱い。

2.寄付はグレー
多くの大企業は寄付のための「財団」を設立している。しかし、そのような事業体の合法性、税金及び慈善的地位は、その統治とともに不明瞭である。ミャンマーには政治献金を規制する法律がないことが問題の一端である。
同報告書は、「例えば、寄付を通して政治的に影響力のある人物の活動に関わったり政府に利益をもたらす等、優れたコーポレートガバナンスとは矛盾することに財団が利用される可能性がある。」という。これは、自動車輸入許可、建設契約、土地売買及びその他の利益の見返りとして、旧政権下では広く行われていた慣習であった。
大物による寄付の利用はラカイン州で特に顕著である。文民政府によって設立されたラカイン人道支援・再定住・開発連合企業(UEHRD)は、地方の大物の支援を受けた開発事業を任されている。UEHRDは、有名企業のオーナーたちから募金を募り、2017年10月時点で1,350万ドルを集めた。
ラカインでの寄付のほとんどは国内企業からだったが、日本のビール会社のキリンはミャンマーでの合弁事業を通じ軍事団体に寄付をしたとして、NGOのアムネスティ・インターナショナルによって指摘を受けた。キリンは寄付を一時停止し、その事業の人権影響評価に着手することで対処した。

3.コーポレートガバナンスには効果的な報道が必要
ミャンマーはコーポレートガバナンスに関する国内メディアによる報道が欠乏している。「企業の報告は、多くの場合慈善寄付に焦点が当てられ、しかもそれ自体が汚職の原因となっている」と同報告書は述べた。ヤンゴン証券取引所の規模と幅広い株主層を持つ上場企業の欠如も、人々の関心を低下させている。
汚職と商取引に関する報告が限定的であるのは、特に通信法第66条(d)に基づく訴追を恐れていることの現れである。
「ラカイン北部の事件に関する報道で2017年12月に拘禁された2人の受賞歴のあるロイター
ジャーナリスト、Wa Lone氏とKyaw Soe Oo氏が最も有名だ。ジャーナリストへの嫌がらせは広範囲に及び、企業によっては直接行われることもあった。」と報告書は示した。
Freedom of Expression Myanmar が通信法第66条(d)の使用を監視したところ、2015年11月から2017年11月までの期間の訴状の10%が汚職問題絡みで、被告の2%が汚職に携わっていたことを確認した。

4.国営企業のガバナンスは依然として混乱
国営企業の情報開示ランキング上位2社は、建設・住宅開発銀行とヤンゴン電力供給公社である。
ミャンマー貿易銀行、No.1 Heavy Industrial Enterprise 、No.2 Heavy Industrial Enterprise 、No.3 Heavy Industrial Enterprise、マンダレー電力供給公社など、多くの国営企業がランキングの最下層に位置している。
これらの国営企業は、the Myanmar Sustainable Developmentのアクションプランで構想された改革の下、コーポレートガバナンスと情報開示を強化する必要があると同時に、このアクションプランによって政府はこれらの企業の効率性と競争力を強化することをコミットされる、と報告書は伝えた。
天然資源ガバナンス協会(NRGI)による2018年の報告によると、一般的にミャンマーの国営企業は政府省庁から独立しているわけではないが、省庁の権限の下にかなり密接に定着している。
「最新情報によると、国営企業の活動を監視するため準独立した委員会を持つのは、ミャンマーナショナル航空、ミャンマー経済銀行、ミャンマー投資商業銀行、ミャンマー外国銀行の4社のみである。」とNRGIは伝える。
しかし、ミャンマーナショナル航空の場合、委員会は5人の退職した公務員で構成されており、独立した委員会を有するとは言い難い。
また、他の国営企業も委員会はあるが、監督ではなく管理機関として機能している。さらに、ほとんどの場合、国営企業の経営陣は関係省庁へ報告し、その資本予算は関係省庁によって設定されている。

5.進歩はしているが、多くの企業は2019-2020年にすべきことがまだまだある
評価された248社のうち、108社はまだWebサイトを持っていない。Webサイトを持っている企業の多くも、この調査の対象となる基準に関連するデータをほとんど、又は全く開示していない。更に、平均スコアを下回った企業が情報を開示した企業全体の約3分の2を占めた。
資本市場が有効に機能するかどうかは、企業や金融機関の透明性と信頼にかかっている。信頼を築く方法の一つとして、質の高いメディア報道がある。つまり、企業は記者が職務を果たすべく、正確な情報を開示する必要がある。
新たに開始した MyCO オンライン登記は、国内の登記企業に関するより多くの情報を提供するために始められたため、ジャーナリストは企業の事業報告を拡大することができるであろう。しかし、尚もジャーナリストと企業の広報担当者双方をトレーニングする必要性が残る。

(Myanmar Times 2019年5月6日版 第4面より)