(1) 雇用契約書
雇用及び技術向上法上、会社は、政府における常勤労働者、研修者及び試用期間中の者を除き、労働者の雇用開始後 30 日以内に労働者と雇用契約を締結しなければなりません。また、雇用契約締結後、当該契約書の写しを管轄労働事務所に提出し、承認を得る必要があります。さらに、単に雇用契約を締結するのみならず、以下に記載している事項を雇用契約書に記載する必要があります。
①職種、②試用期間、③給与、④勤務地、⑤契約期間、⑥労働時間、⑦休暇及び休日、⑧時間外労働、⑨勤務中の食事の手配、⑩住宅施設、⑪医療手当、⑫仕事及び出張における車の手配、⑬労働者が遵守すべき規則、⑭研修参加後に継続して勤務しなければならない期間、⑮退職及び解雇、⑯期間満了時の対応、⑰契約において規定されている遵守すべき義務、⑱合意退職、⑲その他、⑳契約書の規定の修正及び追記の方法、㉑雑則
もっとも、実務上、労働・入国管理・人口省が 2018 年8 月28 日に公表した雇用契約書の雛形を使用することが一般的であり、当該雛形を修正した場合、労働事務所の担当官によっては承認を得るのが難しい場合があります。なお、公表されている雛形はミャンマー語版のみであり、工場での労働者を想定している内容となっています。
また、雇用契約書の言語に関する法的規制は存在しません。勿論、当事者が理解できる言語を用いる必要があるため、ミャンマー語以外を理解しない労働者を雇用する場合には、ミャンマー語の雇用契約書を用いる必要がありますが、英語や日本語を理解する労働者の場合には当該言語を用いたとしても法律上は問題ありません。
しかし、この点についても、労働事務所の職員がミャンマー語以外の言語を解さないことが多いため、事実上ミャンマー語版の提出も強制されることが多いといえます。
(2) 就業規則
ミャンマーにおいては、一定人数以上を雇用したとしても就業規則の作成義務などは課せられておらず、法律上は就業規則について何ら規定されていません。
しかし、上記のとおり、雇用契約書については雛形を大きく修正することが難しいため、会社独自の服務規律等を就業規則に含めることが一般的であり、一定人数以上を雇用する企業においては従業員の管理を容易にするために作成することが多いです。もっとも、法令上は就業規則について規定されていないため、作成すれば当然に全員に効力を生じるものではなく、作成した内容について従業員から同意を得る必要があります。