ミャンマーの新たな実質的所有者規則に関する混乱

  • 2020年 5月 25日

ガバナンス及び金融専門家によると、実質的所有者に関してより透明性を持たせるというミャンマーの新たな規則は正しい方向への動きであるが、一貫性と明確性が欠けている。
投資企業管理局(DICA)は実質的所有者の「透明性及び説明責任の強化」及び「脱税、マネーロンダリング及びテロリストへの資金供給の防止」を目指して、1月に実質的所有者情報の開示に関する指令を施行した。
実質的所有者は、所有者として記録されているか否かに関わらず会社又は不動産などの法人及びその利益に関する権利を他者に、最終的に制御できるよう提供する。所有権の連鎖は犯罪者及びその組織が身元を隠すために使用される。
実質的所有者の透明性及び「政治的に影響力のある人物」の問題に関連する実施は汚職撲滅の中心的な部分であり、当局及びその利害関係者が財務フローを追跡し繋がり及びパターンを特定できるようにと、国家顧問であるアウンサンスーチー氏の政権にとって最優先事項である。
ミャンマーが加盟している採取産業透明性イニシアティブの要件を実施するという圧力の下、現在政府の様々な部署は実質的所有者及び「政治的に影響力のある人物」を含む改革を進めている。
パリに拠点を置く政府間組織、金融活動作業部会によってマネーロンダリングのハイリスク国として分類される可能性が、ミャンマーにこれら分野を一掃するという圧力を付け加えた。
しかし機密性を理由に名前を明かすことを拒否した金融及びガバナンスの専門家は、ミャンマーの新たな規則は透明性を改善させるが、依然として非常に曖昧であり一貫性がないと述べた。
熟練の企業弁護士を包括するミャンマーイギリス商工会議所のリーガルワーキンググループもまた、同指令の実際の適用に関していくつかの懸念があり、DICAに対しフィードバックを提供しているとミャンマータイムズは理解している。
重要な問題は実質的所有者の入口である。同指令は、議決権を有する株式を5%以上保有する者を実質的所有者として定義しているが、これは他のミャンマー規制当局により使用される定義とは異なる。反マネーロンダリング及び反金融テロリズムに関係する顧客デューデリジェンスに関するミャンマー中央銀行からの通達2019年第18号では、20%が入口と設定されている。
DICAの指令がベースとした2014年マネーロンダリング禁止法では、「あらゆる企業又は取極に対して効果的な管理を実施する」者と実質的所有者を定義しているが、具体的な割合は明記されていない。
ヤンゴンに拠点を置く責任ある企業のミャンマーセンターによるPwint Thit Sa2019年報告書によると、非常に少数の企業が実質的所有者について公開している。
「株式保有に関する情報で、5%以上の株式を保有する実質的所有者の身元を明らかにしているか?」という質問に対して、ミャンマー企業248社のうち19社のみが実質的所有者のデータを開示していると回答した。
汚職禁止委員会は国民民主連盟主導の政府の下で強化されており、上級公務員を失脚させたりしているが、行政はまだ家族及び職員が担当する範囲の関係企業家協会と関係する政府の利益相反に対処していない。
DICAの指令は「重要な公共機能を委託されている個人」として政治局影響力のある人物を定義しているが、家族及び民族武装組織の指導者は除外している。これはミャンマー採取産業透明性機関のPEPの基準とは異なっており、政府がミャンマーの巨大で不透明な官僚制における利益相反をきつく取り締まることを困難にしている。
新たな指令は全ての企業の個人がDICA及び内国歳入局に実質的所有者の情報を提出することを必要としている。しかし、その法的権限は2014年のマネーロンダリング禁止法及び全ての企業ではなく抽出企業にのみ言及している大統領府通達2019年第104号に基づいている。同指令が非抜粋企業に適用される法的根拠は不明確である。
「基本情報は公開される予定であり、実質的所有者情報は管轄当局で入手可能となる」と同指令で規定されている。
しかし専門家は、どの当局が管轄になるのか、何故実質的所有者の詳細を公に公開することができないのかが不明確であると述べた。また本情報を要求する会社、メディア、民間団体又は公衆はどの政府機関に働きかけることができるのかについても不明確である。
「実質的所有者及び政治的な影響力のある人物の情報は無償で公開され、全ての市民、特に公的説明責任の強化に重要な役割を果たすジャーナリスト、民間団体メンバー等の者が容易にアクセスできるようにするべきである」とGlobal Witness Myanmar Teamの代表者Paul Donowitz氏は述べた。
「この情報は責任ある投資の促進及び汚職、利益相反の惨劇に対処するためのミャンマーの取り組みに不可欠である」と彼は付け加えた。
(Myanmar Times 2020年2月3日版 第5面より)