ミャンマー政府は記録や公文書の保存に関する新しい法律を起草している。これは国家情報への一般アクセスを制限する恐れがある。
議会で承認されれば、国立公文書局に保存されている情報へ無許可でアクセスすることは刑事犯罪となり、最高3ヶ月の懲役刑及び20万チャットの罰金が併科される。
支援団体Free Expression Myanmar(FEM)は、例え機密性が最も低い情報であっても、誰がアクセスできるかを政府は完全に制御することができるだろうと警告している。
国民民主連盟(NLD)のKhin Aye議員が議長を務める経済金融開発委員会は、2007年に改正された1990年の旧法に代わる国家記録・公文書管理法案を起草した。
新法は、国の遺産に関する重要な文書を計画財務省 (MOPF)の下にある国立公文書局に移管し保管することを政府機関に対して求めている。また、同局は「国家問題に使用する」よう非政府機関やミャンマー国民に関する文書を選定する。
「記録及び公文書は体系的に保存されているので、それらは国家問題の証拠として、また国家及び国民の利益のために使用できる」と、本法案は解釈される。
公文書局責任者のSaw Sandar Win氏はミャンマータイムズに対し、法案の起草に関する公的な協議が行われていないことを明言したが、国民は国会に書面を提出することで意見を提起できると述べた。「国民がこの法案に関して意見を述べると、下院議会にフィードバックされる」と同氏は述べる。
法案の修正を希望する議員は7月23日までに氏名を提出しなければならない。
FEM責任者のYin Yadanar Thein氏は、本法律は情報を求めている企業の妨げになるだろうと語った。情報の透明性はミャンマーの投資家や経営幹部の間ではすでに大きな関心事となっている。
「市民社会としての企業は情報の透明性を頼りに、政府が公約した改革を待っている。本法案はミャンマー政府が恣意的かつ秘密主義的な国家を保持すること、及びその再確認をしたものである。本法案は政府が不透明な現状を維持することを決定したというシグナルとして機能している」と、彼女は語った。
人権活動家のThinzar Shunlei Yis氏は、本法案を可決する前に公的協議が必要である旨を強調した。さもなければ、「ミャンマーの情報に関する権利の新たな脅威となるだろう」と同氏は語る。
法案の内容
ミャンマータイムズが見た法案の第6章11条(a)は、あらゆる情報を4つのカテゴリーに分類する権限を政府に与えている。最も上位に分類される情報「トップシークレット」については、30年間開示する必要がない。この中には、政府の決定を再検討する情報委員会などの独立機関は含まれていない。
政府は、汚職、政策の失敗、人権侵害に関する情報を隠すために、その分類を容易に濫用する可能性があると市民社会団体は警告する。
「新法案は、政府に対して、国家安全保障の名の下に違法行為や人権侵害を隠ぺいする機会を与えるものになるだろう。我々がより透明性と公的な説明責任を求めているのに対し、この新しい法案は大きな妨げとなっている」とThinzar Shunlei Yi氏はコメントした。
また法案では計画財務大臣が議長を務める監督機関を提案しており、当該機関は公文書管理及び保存に関する情報規制及び政策について政府に助言することになる。
局長は、政府保有情報に関する全てのアクセス要求に関して決定権限を有することになる。要求は局長によって承認され、裁判所や独立機関が関与する余地はない。また内部通報者に対する保護もない。
法案は、情報開示制限期間が過ぎた後であっても「必要がある場合」は、局長が文書へのアクセスを拒否することができると定めている。その際局長が拒否できる場合の決定基準については言及がない。
記録及び公文書は、申請者が局長から承認を受け、指定料金を支払った場合にのみ、印刷および配布することができる。
ミャンマーは近年、透明性の確保と情報へのアクセスを促進する法律を可決しいると国際市民社会団体Asia Programme for Article 19代表のMatthew Bugher氏は述べる。これらの努力は称賛に値するが、依然として根本的な秘密主義的国家体制であることに変わりはないと彼は言う。
「政府は、情報へのアクセスに関して段階的に取り組むのではなく、情報に関する法の整備を包括的に進めていくべきである。また、政府の違法行為及び重要な公共の利益についての調査や報告をしようとする者を取り締まる国家秘密法や非合法結社法などの廃止や改革に取り組むという公約を前進させるべきである」
Thein Sein大統領の下の前政権はは、2016年にNLDが政権を担う直前に情報法案を起草したが、新政権では当該法案は取り上げられなかった。Yin Yadanar Thein氏は、政府が情報法案ではなく、公文書管理法案を前進させるという決定を下したことは、彼らの優先事項がどのようなものであるかを物語っていると述べた。
(Myanmar Times 2019年7月23日版 第4面より)